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-件のコメント

[C64] いらっしゃいです

 椿さん、いらっしゃいです。

>素直じゃないランサーとバゼット、上手く表現できてたと思います。
 おぉ、ありがとうございます。
 私の中では、あの二人は言葉を交わさなくても信頼はすでに成り立っているものと。
 その後押しに、主にカレンが抜き差しならぬところまで追い込んで、…………そして、からかわれるというのが運命のような気がします。

>私もこの二人のペアが大好きです!
 書いてて、私も感情移入しちゃいまして、温かい目で見守っていてあげたくなりました(笑)。

>これからもちょくちょく見に来ると思いますので、よろしくお願いしますw
 ハイ、お待ちしておりますです。

 では、椿さんにとって良い年でありますように……。

[C63]

こんにちは。

素直じゃないランサーとバゼット、上手く表現できてたと思います。楽しく読むことが出来ました。私もこの二人のペアが大好きです!

これからもちょくちょく見に来ると思いますので、よろしくお願いしますw

[C60] おそまつさまでした

 doraさん、いらっしゃいです。

>ご馳走様でした!
 バゼットさんが変わろうとしていくのを表現するのがけっこう苦心しました。
 素直じゃないバゼットとランサーなので、これからずっと苦労するとも思いますが……。

 ……バゼット、ランサー、ヘンじゃなかったでしょうか?

[C59]

ご馳走様でした!
  • 2006/01/01(16:15:09)
  • dora
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*短編SS「白無垢の花咲く聖夜に 後編」

○SS短編:「白無垢の花咲く聖夜に 後編」




作者:White Snow

*作者から読者のみなさまへ

 このクリスマス特別短編は、「Fate/hollow ataraxia」の後日談を元にしています。
 ネタバレを多分に含んでいますので、ご注意ください。
 なお、前編と後編とに別れています。
 クリスマスに掲載予定が、遅れましたことをお詫びいたします。

*姉妹作品

 士郎とカレン視点のクリスマス。完結。
 → 短編SS「銀の花咲く聖夜に 前編」
 → 短編SS「銀の花咲く聖夜に 中編」
 → 短編SS「銀の花咲く聖夜に 後編」



 いっしょにクリスマスをすることになった私とランサー。
 どこでするかという話になって、こともあろうにランサーはホテルに行こうとした……。

 ……今から、数十分前の話である。

「はは、死ぬかと思ったぜ、バゼット」
 そんな馬鹿を言う輩には、私の“フラガ・ラック”が黙ってはいない――。


「――ここに住んでんるだな」
 パチパチと爆ぜる暖炉に薪を足しつつ、部屋を眺めていたランサーはぽつり呟く。

 ……聖杯戦争が始まる少し前。
 私達はここを拠点に、七日間だけ生活を共にした。

「……ええ、ここは静かで気に入っていますから」
 ランサーの独白めいた呟きに、私は手を休めず答える。
 彼に暖炉の面倒を見てもらっている間に、私は夜間営業している店で買い込んで来たクリスマス用の料理やワイン、先ほど頂いたケーキを床に並べて晩餐の準備をしていた。

 床でとは行儀が悪いかな、とは思う。
 けれど、ランサーとの晩餐にそんな遠慮はいらないだろう。

 ……色々あったが、ランサーを連れて私の“住い”に帰ってきた。

 この洋館は、深山町郊外の森の中、この地におけるエーデルフェルト家の双子館のひとつ。
 さすがあのエーデルフェルト家の持ち家だっただけあって、調度品はくつろげるような落ち着いたものにまとめられていて品が良い。

 この館は、六十年ほど経過しているという……。

 古いけれど、しっかりした造りということもあるのだろう、定期的に手入はされていたので傷みは酷くなかった。
 士郎君達に手伝ってもらって清掃を済ませば、見違えるように綺麗になった。
 現在は、水道とガス、電気を通るよう手配したので、この洋館は人が住める“家”に生まれ変わっている。

 ――――遅めの晩餐の準備が整う頃、部屋はだいぶ暖かくなってきた。

 それでも、じわりと忍び寄る寒気に、毛布を肩に掛けなくてはならなかった。

「本当なら、坊主のところで賑やかにしてやろうと思ったんだが……」
「……すいません」
 私に合わせてくれたはずのランサーは、「……いや」と言葉を濁す。

「たまには、こういうのもいいもんだ……」
 暖炉の炎を見つめるランサーの赤い瞳は、黄金に輝いている。

「確かに……、こういう静かな夜を過ごすというのも悪くないですね」
 穏やかな空気が満ちている。

 ランサーもすっかりリラックスしているようで、その長い足を伸ばしている。
 私も彼も、この暖炉の火の明かりが生来的に落ち着くのだろう。

「ランサー、グラスを……」
「ありがとよ」
 お互いの手にグラスを持つ。

「メリー・クリスマス!」
 ……チン。

 澄んだ硝子の音が響いたところで、何となく可笑しくなってしまった。
 それは、ランサーも同じ笑み、同じ感想によるものだろう。

「……私達が、キリストの生誕を祝おうなどとは、実に皮肉が利いていますね」
 ランサーは、光の神“ルー”を父に持つ半神。
 私は、自然そのままを受け入れる司祭(ドルイド)の家系。
 私達二人は、唯一の神キリストを信仰しているわけじゃない。

「違いねぇ。ま、楽しけりゃ何だっていいさ」
 今を楽しむことが大事だと言うランサーは、実に彼らしい。

「で、さっきから気になっているんだが、あの紙袋は何だよ?」
「……え?」
 ランサーの指差す先には、ソファーに脱いだ私のコート。
 そのポケットから、紙袋が飛び出していた……!?

 手の平ぐらいの大きさの紙袋は、綺麗にリボンで包装されている。
 見た人全てが「プレゼント」以外には見えないものである。

 私は、慌ててその紙袋を確保すると、後ろ手に隠す。

「こ、これは、ナンでもありません!
 そんなわけで今日はとことん飲みましょう、ランサー!?」
「いやだからさ、それは何だと訊いてるんだが……?」
 目ざといランサーを恨みつつ、激しく葛藤する。

 渡したいけれど、ヘンだと笑われるのはイヤだ。
 渡さないと、私の気持ちを伝えられなくてイヤだ。

「……はぁ。まぁいいや、言いたくないのなら別に訊かねぇよ」
「…………ランサー?」
 このままではランサーに渡すはずのクリスマス・プレゼントが渡せない……!?

 ――――そう考えると、いてもたってもいられなくなった。

「お、おい、バゼット!?」
 私は、手にしていたグラスのワインを一気飲みする。

 味は、良くわからなかった。

 お酒にはあまり強くない私には、それは火のように喉元を通り過ぎていく。
 喉から鼻を通り抜けていくワインの芳醇な香りは、私の脳を一瞬クラリとさせる。

 ……情けない。
 これでも幾度の戦場を駆け抜けてきた私が、今はお酒の力に頼るしかないなんて……。

「そ、そんなに欲しいのなら、差し上げますっ!」
 難しいことを考えるのはもう止めた。
 敵を殴り倒すような勢いで、ランサーの眼前にそのプレゼントを差し出す。

「……い、いいのか?」
「いいから受け取りなさいっ!」
「ハ、ハイッ!」
 私の勢いに押されてか、ランサーはこくこくと頷き、私の紙袋を受け取る。

 ようやく、本当にようやく渡せた。
 ランサーにわからないように深く息をつく。

「何が入ってんだ、これ?」
 そう安堵したのも束の間、ランサーが紙袋をがさごそし出してから、心臓の動悸が強まる。
 全力疾走を一時間続けた時みたいに、バクバクと高鳴っていく。

 まだ、アルコールは回りきっていないのに、顔が熱くなっていく。
 ……おかしい、なぜかランサーの顔を見れない……!?

「開けるぞ?」
「……は、はいっ!」
 上ずった返事を上げると、ランサーは紙袋を開く。

 ……がさがさ。

「ほぉ、クッキーか……。これ、アンタが作ったのか?」
 私が初めて焼いたクッキーをひとつつまみし、しげしげと眺めるランサー。

「……あ、はぃ」
 消え入りそうな声で何とか返事をする。

 そんなに観察されると、不恰好なので恥ずかしい。
 星型とか、四角とか、丸とか、型で抜いたはずなのに、できあがりは歪(いびつ)になってしまった。
 それに、焼き加減も微妙で、少々焦げて黒くなっている。
 何回かチャレンジしてみて、少しはマシなものを選んできたつもりではあったけれど……。

「感謝する」
「ええっ!?」
 本当にびっくりする。
 ランサーが、私のクッキーの入った袋を、まるで杯のように掲げてみせる。

「……別に、おかしくないだろ?
 アンタが俺に作ってきてくれた、その心に胸打たれたんだ」
 さらにびっくりしたのが、このランサーの歯が浮きそうなこの台詞。

「っ! ランサー、今寒気が走ったので、その手の言い回しは止めてください」
「…………まぁ、いいさ」
 あ。かなりランサーはショックを受けているみたいだ。

 ……でも、その一言でこちらはかなり緊張が和らいだのは確か。
 こちらこそ感謝します、ランサー。

 そして、私が緊張しながら見つめる中、ランサーはそのクッキーを口に入れた。

「……あが?」
「?」
 ランサーの顔が歪む。

「……かてぇよ」
 クッキーの感想は、あっさりと一言だけ。

「……ぅ」
 やっぱり傷つく。
 半日かけてようやくできた成功例の結果がこれである。

 ……確かに、ランサーの口からはサクサクではなく、ガリガリゴリゴリと音が響いているから物質的に硬いのだろう。
 同じ小麦粉でできているのに、士郎君の見本はあんなにサクサクだったというのに……。
 敗因は、力が入りすぎてこね過ぎでもしたのだろうか?

「……す、すいません。
 やはり、渡すのではなかった……。あの……ランサー?」
 “不良品”を回収しようとすると、ランサーはそれを渡すまいとする。

「――食えねぇわけじゃない」
 でも、ランサーの口からは容赦なくガリリッ、ゴリリッと音が響いてくる。
 申し訳なく思う反面、彼のそんな子供じみた強がりが嬉しい。

「……大丈夫ですか、無理をしなくてもいいんですよ?」
 その立派な強情さを褒めてあげたいのだけれど、私はランサーに苦痛を味わって欲しいわけじゃない。

「あぁ、大丈夫だ。あのマーボーより、遥かにマシだ」
「……マーボー?」
 ランサー曰く、私の知らない“マーボー”より、私のクッキーの方がマシらしい。

「……気にするな」
 ランサーの口が“へ”の字になって、苦渋に満ちた顔になった。
 その“マーボー”がどんなものかわからないけれど、よほど苦手なものらしい。

「……く。意外ですね。貴方が苦手にするものがあるなんて」
「ばーか。食ったことがねぇからそんなコトが言えるんだ。
 ありゃあ、およそ人の食っていいもんじゃねー」
 豪放快活で鳴らすランサーが思い出すのも嫌なのか、顔が蒼ざめ、吐きそうに口を押さえている。

「……それは毒なのですか?」
「毒だ」
 神速の槍(ゲイ・ボルグ)ばりの即答及び断言。

「そんな危ないものを食べたのですか、貴方は?」
 半ば呆れて言葉が出ない。
 敵地で出されるもの、疑わしきもの、それらは口にしないのが、私の鉄則である。

「……無理矢理にな」
 不愉快気に答えるランサー。

「? 貴方に無理矢理に食べさせることができる……なんて?」
「あぁ、あの言峰の馬鹿野郎が令呪をちらつかせてな」
 いい迷惑だったぜ、とランサーはやさぐれた感じでぼやく。

「……こ、と、み、ね?
 あの言峰の…………好物?」
 ……そう。あの言峰の、好きだったもの?

『――美味い。シェフ、星五つだ。
 いや、いっそのこと“この世全てマーボー”と思うぐらいだ』
 ……などと、マーボーなるものを食しながらあの言峰が言うのを想像する。

 しかし、ちょっとこれは想像外。
 あんな人でなしの彼でも好物があるなんて、人間らしいところもあったのだと驚く。

「……興味がありそうだな?」
「い、いえ、そういわけでは……?」
 心なしか不機嫌そうなランサー。

 それにしても、マーボーとは何なのか?
 今度、士郎君に聴いてみよう。

「……今度食わしてやる」
「ま、待ってください、ランサー!?」
 聞いた限り、食べる気は到底起きない。

 ランサーの目が怖い。
 まるで、いっしょに道連れにしてやるゼと言わんばかりのその目は何ですかっ!?

「なぁ、バゼット。……世の中は“辛い”ことばかりなんだ」
 ランサーは遠い目で私の肩を叩いて「諦めろ、だから食っとけ」と言う。

「な、何ですか、その“カライ”というのはー!?」
 あぁ、謎多きマーボー。
 それはあの言峰に似て、トンデモないものらしかった……。

「……あ、あれ?」
 視界が揺らぐ。

 いつものランサーとの掛け合いになって安心したせいかもしれない……。
 先程まで心拍数が急上昇していたこともあって、アルコールが全身に行き渡って思考能力が低下……していくのを、冷静に認める私がいる。

「? ……バゼット?」
「……らんりゃー、今日はアナタにー、言いたいことがあるのですよー、えへへ☆」
「げっ、絡み酒だったのか、アンタはー!?」
 うふふ、おかしい。
 目の前のランサーが、すごーく困った顔している。

 何だか、とってもいい気味で、いい気分だ。
 ……目の前には、ワインのボトルが「私を飲んで」と言っているし。
 だから、飲む。

「!? オイ、まだ飲む気なのか!?」
「……ぷはー。いいではー、ないですかー、らんりゃー。今日はー、ぶれいこーなのですよー!」
「いや、良くない、良くないぞー、バゼット!」
 止めようとするランサーの手から逃げ続ける。

「……勘弁してくれ」
「ダメッ! 勘弁、しませんよー、らんりゃ~! あははっ☆」
 ……そうだ。人の気も知らないで、あの性悪のサーヴァントであり続けるランサーに、今日こそはっきり言ってやらなくては!



「――おーい、悪かったよ。いい加減に機嫌なおせよ……ん?
 …………寝ちまったのか、バゼット?」
 肩にかかる重みで気がついた。

 さっきまで、バゼットは延々と俺に対する愚痴を続けながら、空のグラスの縁をなぞっていた。
 「しらねぇよ」と、いい加減少し冷たくしてやったら、「むぅー」とそっぽを向いてだんまりを始めたのだ、この酒乱で絡み酒の嬢ちゃんは。

「……ん、すぅ……」
 俺の肩に寄りかかり、微かに寝息をたてるバゼットは、幼く見えるほど無邪気な寝顔だ。
 完全に俺のことを信用しているのか、うっかり油断しているだけなのか、判断はつかない。

 いつもは鉄壁というほど可愛げがないのに、今は無抵抗そのもの。
 ……不覚にも、さっきまでの彼女の失態を忘れて、可愛いと思えるぐらいに。

「……あ……ん」
 しかも、寝息が色っぽいし。

 最近、いい女と縁がなかったので、これはちとキツイ。
 お預けを喰らっているようで、どうも居心地が悪かったりする。

「……飲みすぎだ、バカ」
 強くもないのに、こっちが止めるのも聞かずに飲むからこうなった。
 そのアルコールのせいで、ほんのり朱色染まったバゼットはいつにも増して、女として意識させられる。

 こうして眠っている分には、可愛くていい女だと思うが……。

「――――、……ア、ン……リ……」
 ……ったく、いい度胸をしてやがる。
 こんないい男が肩を貸してやっているのに、当のバゼットはいけすかない“誰か”を寝言で呼んでいるらしい。

 はぁ。……カッコつかねぇよ、ホント。

 暖炉の炎を見つめながら、バゼットの鉄拳のようなクッキーをガリガリと齧って、ワインで押し流す。

 この“鉄拳クッキー”は、本当に硬い。
 どれほどの忍耐でつくられたのか、“味”に関してバゼットのことを知っているヤツならば奇跡的に食えることに驚くだろう。

 ただの栄養補給として割り切るバゼットに、料理なんてとんでもない話だ。
 料理する手間を省いて、“ナマの原型”の素材のまま出てくることも在りえるのが、バゼットなのだ。

 それが、マズイけれど食えるのだ。
 クッキーの味は、確かにするし。
 ……歯の方が、砕けそうなぐらいに硬いのではあるが。

 そう思うと、これは食いきらねばならない。
 女の想いを懐深く受けとめてやれるのは、男としての矜持だろう。
 “クランの猛犬(クーフーリン)”の牙持つ俺は、断じて小麦菓子ごときに負けるワケにいかんのだ。

 どちらにしろ、気分はサイテーだった。
 ほとんど自棄(ヤケ)酒である。

 その原因は、やはり隣で眠りこけているバゼットのせいだ。
 けれど、この拷問じみた“鉄拳クッキー”を食べているせいでは、決してない。

 ――――『私はー、貴方のましゅたー、なのですから~☆』

 酒の膽言(うわごと)ではあるが、そう繰り返していたバゼット。
 いつもは本音を口にしないが、酒のおかげで漏れた本音のバゼットの言葉。

 その固執は、病的であると言える。
 原因を考えれば、仕方がないとは思う……。

 ……あれは、俺の一生の不覚だった。

 主の信頼に応えてこそ、真の戦士。
 そして、戦場にあって背中の心配をさせないのが最も頼れる戦友の証。

 今回の聖杯戦争において、俺を召喚したマスターのバゼット。

 能力においては申し分がない。
 かつての時代においても、俺が知る限りでも彼女に勝る戦士を探すのは難しいくらいだろう。
 そのマスターであるバゼットは、俺が背中を安心して任せられる戦友だったのに、だ。

 俺の方が、そのバゼットの背中――隙を守ってやれなかった……。

「――彼は私の友人です。心配いりません」
 まったく、バゼットらしくもない油断だ。
 その油断に、言峰綺礼というバカに裏切られることになる。

「――その信頼を示したい。……貴方は外で待っていてください」
 せめて俺を側に置いていれば、いくら不意打ちとはいえ防げたハズだ。

「……わかった。何かあったらすぐ呼べ」
 どう言い訳しようと、これは俺の油断だろう。

 霊体化し、館の屋根に昇る。
 程なく、言峰が俺と入れ代わりに部屋に入っていた。

 ……今でも、目を閉じれば鮮明に思い出せる。
 令呪なんて鬱陶しいものさえなければ、あのマーボー馬鹿に一番槍して、コトは終わっていただろう。

 ――――あのバゼットほどの戦士が、背後を許す隙など考えられない。

 それを見た光景は、俺にとって驚愕だった――。


 ……突如として、俺とバゼットとの繋がりが断ち切られた。

「――ほう。君がランサーかね?
 言うまでもないが、……動くな。じきに終わる」
 その言葉に一瞬、俺の槍を止めさせられる。ヤツは、バゼットの首に足を乗せていたのだ。

 ……少しでも動けば、この首を踏み潰す、と。

 それが、霊体のままバゼットがいる部屋に急行し、躍り出るように実体化して目にした驚愕すべき光景だった……。

 だが、お笑いだ。
 この俺にその脅しは通じない。

 その鈍間(のろま)な動作が済む前に、俺の槍はオマエを十回は串刺しにできる。
 今すぐその汚い足を、バゼットの首から解放することができるのだ!

 ――――が、それを実行する前に、全てが終わっていた。

 誰かの腕を、ヤツは無造作に捨てる。
 そして、ヤツの手には灯火のように輝く大事な“何か”を握っていた。
 ……それを、ヤツは自分の左手にあてがう。

「――では、最初に命じよう。
 ランサー。……今より、私がお前のマスターだ」
 バゼットのみに許されるはずの、三つだけの“令呪”の一つが下される。

 ――――コロセナイ。

「……ぐっ!」
 目に見えぬ、魂すら拘束する縛りが俺の体に展開される。
 ……そう。サーヴァントと呼ばれる“モノ”は、マスターに“令呪”ある限り、その命奪うほど逆らえない。

 ヤツの目前で、ヤツの首を眼前にして、俺の槍は今度こそ本当に止められた。
 ……それで、俺はヤツのサーヴァントに成り下がってしまったのだ。

「……裏切ったな、裏切ったな、言峰……!」
 床に倒れ、苦しげに怨嗟の言葉を吐くバゼット。

 令呪があるはずの左腕は、すでにバゼットにない。
 そこから大量の血が床に広がっていた。

「……ラ、ン、サー」
 ……致命傷だ。
 もう数分もすれば、その命は尽きるだろうに、バゼットは俺に手を伸ばす。

 うつ伏せに倒れたバゼットは、背後からの奇襲によって敗れたとわかる。
 その隙を許したこと自体、信じられない光景である。

 ……汚ねぇ野郎だ。
 あのバゼットが背中を許すほどの隙を見せる相手だったというのに――。

「――何をしている、ランサー。
 そんな死に損ないは放っておけ」
 ヤツは、もう用はないとばかりに部屋を出て行こうとする。

「……それとも、もう一度命を下さねば動けんか?
 “それ”を殺せ、とな」
 屈辱で歯噛みする。
 バゼットが敗れた時点で、俺も敗れていたのだ。

「……わかった。
 俺は敗残者だからな、勝者には従おう」
 戦いとはそういうものだ。

「……ラ、ン、サー?」
 俺はそのすがるような呟きを、最期に背後で聞いた。

「――自己紹介がまだだったな。私は言峰綺礼と言う」
 オマエの名前などどうでもいいのに、ヤツは名乗った。

「あぁ、君の名は知っているから答えなくて結構。その真名、クーフーリンだろう?
 さすがと言うべきか、君ほどの英雄を得ることができて私は嬉しい」
 どうして知っているのか、言峰と名乗る神父は、俺の名を言い当てた。

「何故、知っているのか、という顔しているな」
 なら教えてやろう、とヤツは微笑する。

「いやいや、彼女はずいぶん君にご執心だったよ。。
 以前、そのようなことを聞いた覚えがあっただけでね。それを本当にこうして見事に召喚してみせるとは、なかなか可愛いところもあるじゃないか……」
 バゼットとの付き合いは短くとも、それがどういうことなのかわかる。
 本音とか、心の内を、弱さを他者に決して見せようとしないのがバゼットだ。

 ……ヤツは、バゼットから“私情”を聞ける間柄だったのだ。

「……言っておくぞ、マスター。
 その令呪が尽きた時、俺は貴様の心臓を貰い受ける」
「……ふふ、覚えておこう、ランサーよ」
 俺の“誓い(ゲシュ)”でもって、新たな契約は果たされた。

「……君には色々と働いてもらわねばならん」
 聞きたくもなかったので、それを無視する。

「――マスターとそのサーヴァントを探れ。
 だが、初見で相手は殺すな。……いい駒を探さなくてはならんからな」
 ……二度目の令呪が下された。

 ――――こうして、俺はランサーとして聖杯戦争を駆け抜ける……。


「……畜生め」
 怒りで知らず噛み締めると、“鉄拳クッキー”でさえ噛み砕ける。

 ……思えば、このバゼットといっしょに命果てるまで戦うことができたなら、どんなに爽快だったかわからん。
 しかし、それは過ぎたこと。
 現に、俺は今もずっとこいつの側にいてやることはできないのだ。

 機会があるのなら、このバゼットの背中を守ってやりたいとは思う……。

『――そんなに長い間じゃないわ、ランサー。
 それまで私の“使命”に付き合いなさい。それが済んだら、彼女に飼ってもらうのね』
 しかし、俺の現在のマスターも、バゼットぐらいに手がかかるのである。
 …………面倒な約束もさせられちまったし。

「……つくづく女運がないね、俺は」
 一癖も二癖もある女ばかりと縁がある。

 もっと、すっぱりいい女とつきあいたいものだ。
 例えば、手近なところで遠坂の嬢ちゃんとか……。

 しかし、意中の嬢ちゃんはあの坊主に骨抜きとあっては致し方ない。
 俺が本気になったら、坊主が可哀想なことになっちまうし。

『――凛に手を出すとは、…………“釣竿を抱えて溺死しろ”!』
 ……いや、もう一人舅(しゅうと)みたいのが黙っちゃいないか。

 ったく、そんなに大事ならずっと側にいればいいだろうによ、と余計な考えも浮かぶ。
 …………馬鹿らしい。何であのコピーバカの心配なんぞしなきゃならん。

 げんなりした気分で、ワインをさらに煽る。

「――ちっ。冷えると思ったら、本当に雪が降ってきやがった……」
 窓の外を見ると、けっこう本降りの雪が降り始めてきた。
 この分であれば、明日には積もるぐらいは降るだろう。

 クリスマスのカミサマとやらも粋な計らいをする。

 ――――白い花、舞うように降る雪。

 酒の肴には中々に上等だ。
 それに、その雪を眺めていて気がついたこともある。

「そう言えば、アンタは白無垢の花が一番似合う気がするな」
 柔らかな表情を浮かべるバゼットに、花を贈りたいと思ってしまった。

「……寒い、……、…………ランサー」
「!? ……何だ、寝言かよ。紛らわしい」
 今のはかなり驚いた。
 独り言が聞かれたかと思ったが、そうではなくて一安心。

「……寒いのか、バゼット?」
 答えはないが、肩を震わせて寒そうに身を縮ませている。

「……やれやれ。眠っていても人遣いが荒いねぇ。……よっと」
 寝言で寒がっているお姫様を、しっかり毛布といっしょに抱きしめてやることにした――。



 ――――夢現(ゆめうつつ)のこと……。

 懐かしい夢の揺り籠で、懐かしい“彼”と再会した。

『――よう。アンタがしっかりやっているか、見物に来てやったぜ。
 ……楽しくやってるか?』
 また、貴女に会えるとは思いませんでした……。

 ええ。……楽しいですよ、アンリマユ。
 …………貴方に申し訳ないくらいに。

『それでいいさ。何を気に病むことがある。
 他の人間を見習えよ。アンタはもっと自分の欲望に忠実に生きた方がいい』
 ごめんです。あなたのように無節操では品がない。

『そうかよ、あいかわらずお上品なこって。
 ……それでぇー、望んだものは見つかったのか、バゼット?』
 いえ、まだです。
 どこにあるのかも、どんなものなのかも、まだわかっていません。

『ハハ、足掻け、足掻け!
 その方が、アンタにはお似合いだ……!』
 ……言いますね。少しは応援してくれもいいでしょうに。

『やだよー! オレはアンタが苦しみながら精一杯足掻くところが好きなんだからさ』
 私はあなたのその根性が捻じ曲がっているところが嫌いです。

『ちぇっ。オレはこーんなにアンタのことを愛してんのに。……理解されないのは辛いねぇ、うん』
 ……貴方に愛しているなんて言われると気持ちが悪いですね……。
 ……でも、…………。

『ん? 何だ、言いかけで口ごもるとはアンタらしくもない。
 ほれほれ、いつものストレートで容赦のない物言いはどうした?』
 おや、私はそこまで容赦がなかったですか? それは知らなかったですね。

『うわっ、気がついてねーよ、この人。
 実は影で泣いてたんだ、オレ。誰か傷ついたオレの心の悩みをカウンセリングしてして、プリーズ!』
 お笑いです。貴方にそんな可愛げがあるのなら、私はもっと苦労しなくてすんだはずです。

『ほーぉう、どう苦労したんだ、言ってみ、バゼット?
 オレ、すごく興味があるね。アンタを困らせるの好きなんだ。好きな子にイタズラしたくなっちゃう心理みたいな? 参考のために教えろよー、なー、バゼット♪』
 ……そういうところです。

 それで、……ですね、先程も言いかけましたが、私はこんな言い合いをしたいわけじゃなくて、貴方に言いたかったことがあったのです。

『マジ? 愛の告白とかなら、大歓迎。それ以上だったら、もっと――』

 ――――……ありがとう、アンリマユ。

『なっ!? だぁーっ、バカッ、やめろって!
 うわぁ、信じられねー。そんな恥ずかしいコトを!? やべぇ。見ろよ、トリハダたっちまったい』
 ……そう。貴方は感謝とかされると、嫌がるのですね?
 あいかわらずの捻くれ者で、呆れます。もっと前に気がついていれば、いくらでも感謝の言葉や、親愛の言葉を投げつけてあげたものを。……実に残念です。

『うへぇ。それは願い下げだね!
 ……つーか、カレンとつるみ出してから、何か似てきてね、アンタ達?』
 はは、面白い冗談ですね、アンリマユ。

 あまりに面白いので、……思わず手が出てしまいました。

『…………ぶった!?
 暴力反対! 霊体なオレ様にクリティカルなんて、何てデタラメぶりだよ、アンタはー!?』
 失言は身を滅ぼすのです、わかりましたか?

『コエー、マジでコエーよ、この女ー!
 ……ふっ。誇っていいぜ、その無慈悲なまでの暴力。オレよりよっぽど悪魔っぽい』
 こ、懲りていないようですね、貴方は……!?

『ハッ! こんなにスリルがあって楽しいのに、懲りるかよ。
 しかし、このままここにいたら、ボコボコのミンチになっちまうかな? ま、そうなる前に、トンズラすっけどー』
 ……アンリマユ、もう行ってしまうのですか?

『ん? あぁ、これから行くところがあるしな。……これでも忙しいんだぜ、オレは』
 忙しい? ……あなたが?

『おうよ、オレは“この世全て悪”(アンリマユ)様だぜ?
 人間どもが生きさらばえている限り、暇じゃねぇんだわ、これが。ホントは、ゆっくりさせろってんだけどな』
 ……その在り方は、今もずっと変わらないのですね?
 それでは、貴方が救われないままだ……。

『はん、……たりめぇだろ?
 オレは“人間の悪性”そのものなんだからな、救われるワケないじゃん。その必要もないし、それに救われたいとも思ってねーもん』
 ……どうだか。
 あいかわらず嘘つきです、貴方は。

『……そうでもねぇよ。
 ステキに自滅していく人間どもの中には、たまにアンタみたいな面白いヤツも見られるからな。
 こんな腐った世界でも、まぁ……捨てたモンじゃねーってことだ!』
 ふふ、何やら照れくさそうにするとは、貴方にも可愛いところもあるのですね。

『え? なに、オレに惚れ直した?』
 ? いえ、最初から惚れていませんが。

『うわっ、かなり酷いコト言うね。オレ、泣きそう、しくしく』
 わざとらしいのはお止めなさい。

『バレたー?
 ……でも、わりと本気だったんだけどな、アンタのことは』
 え? 今、何と……?

『……じゃあな、バゼット』
 ま、待ちなさい、アンリマユ!
 とても気になることを、言い残していくんじゃありません!

 このままでは、今度こそ本当に「さようなら」と貴方に言えない……。

『あ? これでお別れじゃないぜ、バゼット』
 ? ……お別れじゃない?

『次、会う時はお互い地獄だろ?
 アンタにはどうせ無理だろうが、精々、素直な良い子になるこった――』
 くっ、馬鹿にしていますね貴方はー!!!

『くく。やっぱ、面白いねー、アンタは。
 輝いてるぜ、眩しいくらいになー!!!』
 やはり待ちなさい、アンリマユ!

 その馬鹿にした態度、許せません。
 その性根を叩きなおしてあげます!!!

 ――――……下らなくて、優しい夢を見た。

 真っ暗な闇の中。
 私と声を交わしていた小さな明かり――アンリマユは、つかめなかった。
 そして、笑い声だけ残して消えていく。

 代わりに、私の周りは光が昼間のごとく満ちて、視界がだんだん晴れていく。
 けれど、その光は私には強すぎる。
 その光は痛みを伴うぐらいに、容赦がなくて冷たい。

 ……寒い。
 凍えてしまいそうだ。
 この寒さと痛みは、現実という在り様そのもの。

 夢の揺り籠は、不実でありながら、私には優しかった。
 けれど、現実は痛くて冷たいけれど、結実することもあることを彼は示してくれた。

 負けたくない。
 笑われたくない。
 認めて欲しい。

 精々足掻け、と彼は言った。
 だったら、そうしようと思う。

 あのアンリマユは、欲しくて欲しくてたまらなかった日常という願いを放棄した。

 もう望んだものは叶った、飽きた、と強がりを言って……。
 この願いは間違っているから、変わりたいから、とその最期に彼の人格――衛宮士郎という“正義の味方”らしく実行したのだ。

 ……恐らく、生きることを恐れる私を後押しするために。
 その誇りに、彼のマスターだった私が汚すことなどできない。

 ……そして、ランサー。
 幼き頃から憧れた、助けたかった私の英雄。

 運命を受け入れ、全力疾走で駆け抜けて生涯をまっとうしたその姿に憧れた。
 けれど、私の望みはその英雄を助けたかった。
 あんな最期など、私と一緒なら遂げさせない、と。

 …………あぁ、何だ、と今さら気がついた。

 ――――私の望みは、昔から持っていたんだ……。

 けれどそうするには、私はもう一度、彼に背中を任せてもらえるよう信頼を得なくてはならない。

 そのために、私はあのカレンから令呪を取り返す。
 その上で、あのランサーに認めてもらわなくてはならない。

 考えれば考えほど、一筋縄ではいかない。
 でも、敵は強ければ強いほど、倒し甲斐はある。
 あのランサーがうんと言わないのなら、力づくで認めさせるまでだ。

 私には、結局こういうやり方しかできないのだから――。

『――眠っていても人遣いが荒いねぇ……』
 そんな優しい声が聞こえた気がした。

 ……不思議だ。
 何だかぽかぽかと暖かくなってきて気持ちが良くなってくる……?

 ――――暗闇の夢の続きには、光があった。

 見上げれば、葉の新緑で覆われた天蓋(てんがい)。

 風が吹き抜けるたび、陽光が揺らいで目に眩しい。
 その枝葉が小波(さざなみ)だつと、海を見下ろしているような気さえする。

 ……獣の声、足音。
 ……鳥の声、羽音。
 ……風の声、葉音。
 ……川の声、滝音。

 静かだけど、静かじゃない。
 冬の季節が終われば訪れる、陽気な春の喧騒に包まれた、森の音々……。
 ここは、私の懐かしい故郷。

 …………あぁ、こんなに気持ちが良くて、懐かしい。
 この安らぎの大樹に身を預け、微睡(まどろ)む幸福に私は涙する――。



「――よう。目が覚めたか?」
 奇しくも、偽りの四日間で繰り返されてきた同じ言葉を聞いて、目が覚める。
 その声だけは、聞き間違えることはない。

「……、ランサー……?」
 この声は、夢の揺り籠で、私と聖杯戦争を勝ち抜いた彼――アンリマユじゃない。

「大丈夫かよ、オイ?」
 ……そう。この声は、本当の聖杯戦争に負けた現実の世界で私が最も信頼するランサーの声だ。

「……大丈夫、…………いえ、認めます。
 私は二日酔いです、頭がガンガンします。……辛いです。動けません」
「だろうな。アンタ、酒くせぇし」
「……う」
 静かで容赦のない言葉が突き刺さる。

「……あのー、ランサー?」
 あれから、ランサーに絡み始めてからの記憶が定かではない。

「何だ?」
「……あの、私は……? いえ、何でもありません」
 昨晩、何をしていたのか、聞きたかったけれど止めた。

「大人しくしてな。今、水を持ってくる」
「……はい」
 ランサーは、私にそれ以上何も言わない。

 ……ランサーらしく、からかいの言葉ひとつない。
 それだけ、フォローのしようがなかったということだろうか?

 なのに、ランサーの顔は、無表情でありながら、冷たくもない。
 ただ穏やかな顔しているので、どう思っているのかよくわからない。

「ほれ、水だ」
「……ありがとう、ランサー」
 私はランサーから水の入ったコップを受け取る。
 何という醜態だろう、ランサーに介抱されようとは。

「……美味しい」
 あの温かい缶コーヒーも良いけれど、今はこの冷たい水の方がありがたかった。

「!? ……そうか、美味いのか」
「?」
 私がおかしなコトを言ったのか、ランサーはようやくニカッと笑う。

 ともあれ、その一杯でだいぶ落ち着くことができた。
 部屋の様子にまで考えが回るようになる。

 床でそのまま眠り込んでいたのだろう、私は毛布に包まれていた。
 でも、体には毛布以上に包まれていた暖かさは今も残っている。

「……」
 その暖かさが逃げないように、毛布を掻き抱く。

 何しろ寒いのだ。
 暖炉の火が消えかけているから、部屋は冷えつつある。

「――雪が、降ったのですね」
 ……寒いと思ったら、窓の外は眩しいぐらいに雪景色になっていた。

 夢に見た春は、まだまだ先。
 それは残念ではなく、待っていれば必ず訪れるもの。
 待ち遠しく日々を過ごしていれば、直にやってくるだろう……。

 ……さぁ、やるべきことは多い。

 まずは床を片付けなくてはいけないだろう。
 床には、惨状と化した晩餐の名残が散乱している。

「……?」
 ふと目にやれば、私がランサーに渡したクッキーは一つも残っていない。
 ……いや、それ以上に、グラスに花が飾られていることに驚く。

「? 何ですか、これは?」
「さぁ? サンタからのプレゼントじゃねーか?」
 とぼけたランサーの声。
 でも、知っている。

「……そうですか。
 白い花が似合うから私に贈ってくれたのではないのですか、ランサー?」
 夢現に聞いた言葉を告げる。

「!? き、聞いてやがったのかっ!?」
「さぁ? どうでしょう?」
 私もとぼけてみせる。

 ――――氷雪でできた白い花。

 その花の核には、「氷」を意味する“Isa”(イサ)のルーンが見える。
 恐らく、外の雪をこのルーンでもって氷結させて、花として造形したのだ。
 ……ルーンの扱いに長けた者でしかできない芸当なので、わりと誰のものであるかは明白なのだった。

「……ありがとう、サンタさん」
「…………そんなもんしか用意できなくて、こっちこそ悪かったな」
 そんなことはない。
 こんな涙が出そうなぐらい嬉しい贈り物は、生まれて初めてだ。

「ランサー……」
「……バゼット」
 私達の視線は自然と絡み合う。
 こういう状況が得手のはずのランサーが、赤くなっているのが少し可笑しかった。
 私も……酔いの残りせいではなく、赤くなっているのだけれど……。

 が、この面恥ずかしい雰囲気を壊す声が聞こえた。

「――仲がいいのね、貴方達」
 その声は、今ここで聞こえてはいけない、間違っても、絶対に。

「ランサー……?」
「バゼット……?」
 ものすごくイヤな予感に襲われる。
 「ははは」と、お互い乾いた笑いしか浮かばない。

 私だけではなく、あのランサーが気配に気づいていないなんて、そんな馬鹿な……と思いたい。
 恐る恐る声のする方を見て、幻聴ではないことを知る。

 ……今回のサンタは、サービス過剰に違いない。
 望んでいないのに、雪の光を受けて銀に輝く花が、そこにも一輪。

「おはようございます、バゼット、それにランサー。
 ……ふふ、溶けてしまいそうだわ」
 なぜか、カレンがソファーに座ってお茶を啜っていた。幸せそうに。

 ――――あぁ、私に何か恨みでもあるのか、クリスマス。

 一二月二五日。
 キリストの生誕の、その当日――。

「「――デターーーー!!??」」
 私とランサーは朝一番、絶叫するのだった……。



<履歴>
掲載日:2005/12/31
校正一回目:2007/01/19

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4件のコメント

[C64] いらっしゃいです

 椿さん、いらっしゃいです。

>素直じゃないランサーとバゼット、上手く表現できてたと思います。
 おぉ、ありがとうございます。
 私の中では、あの二人は言葉を交わさなくても信頼はすでに成り立っているものと。
 その後押しに、主にカレンが抜き差しならぬところまで追い込んで、…………そして、からかわれるというのが運命のような気がします。

>私もこの二人のペアが大好きです!
 書いてて、私も感情移入しちゃいまして、温かい目で見守っていてあげたくなりました(笑)。

>これからもちょくちょく見に来ると思いますので、よろしくお願いしますw
 ハイ、お待ちしておりますです。

 では、椿さんにとって良い年でありますように……。

[C63]

こんにちは。

素直じゃないランサーとバゼット、上手く表現できてたと思います。楽しく読むことが出来ました。私もこの二人のペアが大好きです!

これからもちょくちょく見に来ると思いますので、よろしくお願いしますw

[C60] おそまつさまでした

 doraさん、いらっしゃいです。

>ご馳走様でした!
 バゼットさんが変わろうとしていくのを表現するのがけっこう苦心しました。
 素直じゃないバゼットとランサーなので、これからずっと苦労するとも思いますが……。

 ……バゼット、ランサー、ヘンじゃなかったでしょうか?

[C59]

ご馳走様でした!
  • 2006/01/01(16:15:09)
  • dora
  • URL
  • 編集

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