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*短編SS「ライダーさん、初夢です 後編」

○短編SS:
「ライダーさん、初夢です 後編」




作者:White Snow

*作者から読者のみなさまへ

 この短編SSは、「Fate/hollow ataraxia」のネタバレを多分に含んでいます。
 ご注意ください。


「起きなさい!」
「いつまで惰眠を貪るつもり!」
 耳元で二つの怒鳴り声。
 こ、これはマズイ。経験上、早く起きないと、怒られる――!

「――ハイ、姉さま方!」
 懐かしい声で叩き起こされた。

「あら、寝ぼけていますわ。
 私(エウリュアレ)、どう思いまして?」
「そうですわね、私(ステンノ)。
 どうやら、寝ぼけて元から頭の悪いのがさらに悪くなっているようね」
 その不機嫌そうな声を聞きながら、私の目が大きく開かれる。

「上姉さま、下姉さま!」
 二度と会えないと思っていた二人に会えて、嬉しくて声が上ずる。
 ……上ずったのは、多少は怯えているせいかもしれない。

「……本当に寝ぼけているようですわね、私(ステンノ)」
「まったく、そうですわね、私(エウリュアレ)。本当に手のかかりますこと……」
 深々と姉さま方は溜息をつかれる。
 なんでそんなにご立腹なのかはわからない。……いつものことながら。

「あ……う、ちょ、朝食の準備でしたら、今から……!」
 心当たりがあったので、慌てて申し出る。
 自己申告したほうが、姉さま方の理論としては罪が軽い。……ほんのわずかだけれど。

「それは当然のことよ」
「それとこれとは別に、今は訂正しないといけない案件があります」
「は、はあ……」
 朝食の準備をするより他に、何があるのだろうと息を飲む。

「姉さまは、貴女です」
 そう言って二人は、私を指さす。

「は? ……私?」
 私は自分を指差すと、姉さま方は頷く。

「全くもって不本意ですが」
「そうです、運命を呪いますわ」
「……えぇと?」
 ついていけなくて、ただ戸惑う。

「そして、私(ステンノ)は貴女の妹」
「そして、私(エウリュアレ)は貴女の妹」
 何だか、とっても質の悪い二重奏が聞こえた。

「……おやすみなさい、姉さま方」
 これは夢だ。
 そう思って、私は眠ることにした。

「だからっ、起きなさい!」
「早く起きて朝食の準備をするのが、妹である私達に尽すのが姉である貴女の役目でしょう!」
 眠ろうとしても、二人の声は止まらない。
 ……これは、夢ではないらしい。

「うぅ、夢だと、夢だと言ってください、サクラ~!!!」
 ダンダンゲシゲシと容赦なく踏まれて蹴られて、泣けてくる。

 とっても痛いけど、我慢する。
 痛いのは、夢じゃなくてこれは現実だと教えてくれる。
 それでも、目を開けたら、本当にこれが現実だと認めなくてはならなくなる。

「……まだ起きませんわね、この姉!」
「しょうがありません、あの仔(ペガサス)を連れてきましょう」
「……!」
 必死に起きないように抵抗していると、いつの間にか物騒な話になってきた。

「まあまあ、それはいい考えね、私(ステンノ)。
 では、早速“騎英の手綱(ベレルフォーン)”で、景気良く吹き飛ばしましょう♪」
「そうでしょうとも、私(エウリュアレ)。
 空高く舞い上がったところで海にドボーンとなれば、いくら恐竜並に鈍い姉でも起きるでしょうよ、オホホ♪」
 ……助けて、桜!



 ――――伝説に曰く。

 “形のない島”には、三人の女神がいる。

 三女、“遠く飛ぶもの(エウリュアレ)”。
 次女、“強い女(ステンノ)”
 そして、その二人の姉――長女、“大きい女(ダメーサ)”。

「あぁ、神話もメチャクチャになってるぅ! それに、ダメーサなんて名前はイヤですぅ!!!」
 目覚めた世界は、あんまりと言えば、あんまりな世界。
 ……と言うより、私が知っている世界と、姉達が妹達に変わっただけで状況的に何も変わっていない。

 ……よく考えよう。
 私はこんなお願いをしただろうか……?

『――もしも生まれを選べるなら、妹なんているものか』
 ……アレか。
 確か、あれはイリヤ達が士郎の妹の座を賭けて争っていた時のことだ。

 ……あの一言が、今の事態を引き起こしたのか。

『当たり。お望みどおり、アンタを妹じゃなくしてやったぜ、嬉しいか?』
 ギャハハ、と高らかに笑いながら、自称“カミ”は通り過ぎていく。

 っく、どうせなら、私は一人っ子の方が良かったのに……!

 でもその辺りを見事に曲解してくれそうな天邪鬼ぶりな自称“カミ”そうだった。
 ここで不平不満を高らかに宣言したら、どんなコトになるかわからなすぎて怖い。

「まだブツブツとうるさいですわね、このダメ姉は」
「本当に大きいだけが取り柄ですこと、このダメ姉は。妹として、本当に嘆かわしいですわ」
「……うぅ、あぁ……うぅ」
 ダメ姉ダメ姉と言われて、かなり凹む。

 そして、そんなダメ姉の私は、しっかり朝食の準備をさせられて給仕の真っ最中だったりする。
 ちなみに、いっしょに食事は参加させてもらえない。

 ……くぅくぅ、お腹が鳴りました。

 まるで、シンデレラ。
 ちょっと前に読んだあの絵本に、とっても親近感が湧いてくる。
 けど、ここでステキな王子様とか、親切な魔法使いさんは期待してもいいものか……。

「……ちょっと、このダメ姉!」
 いきなり悲壮な声で、上妹ステンノが叫ぶ。

「ど、どうかしましたか……?」
「どうかしましたかじゃないわ、このダメ姉、これよ、これっ!」
 恐る恐る尋ねると、上妹ステンノは自らの皿からソレを、ぶすっと刺して私の目前に突き出す。

「……イモ、ですか?」
 目の前にあるのは、蒸かしたイモ。

 より正確に言うなら、それはジャガイモ。
 湯気を立てるそれは、ふっくらいい感じに蒸し上がっている。

「あ、それ美味しそうですよね♪」
 うん、ちょっぴり自信作。
 塩とバターをつけて食べると、とても美味しい……はず。

「まぁまぁ! なんて恐ろしいものを私(ステンノ)に出すのよ、ダメーサ!」
「まったくね、私(エウリュアレ)。親の顔が見たいものだわ、このダメーサ!」
「……同じ親だと思う」
「だまりなさい!」
「ホントよ、口を慎みなさい!」
「……うぅ」
 集中砲火を喰らって何も言えなくなる。

「えーと、そのイモが何か……?」
 まだ上妹と下妹の言わんとすることがわからなくて、首を傾げる。

「これだけ言っても、まだわからないなんて、ホントにダメな姉、駄メーサね!」
「しょうがありませんので、頭の悪い貴女にも特別にわかりやく言ってあげますわ、駄メーサ!」
「うわぁん、そんな駄メーサ駄メーサって酷ぃい……」
 私は震える子羊さん。
 お外には、狼さんが今か今かと待っています。

「いい、可憐な私(ステンノ)にこんなイカついイモを出すなんて、貴女はなんて了見をしてるの!」
「そうです、私(エウリュアレ)の言うとおりです。
 もしかして、貴女……私をイモみたいにするつもりなのね、あーそうなのね、そーなのよ、わかってるわ、この妹イジメが好きな鬼姉!」
 それだけは絶対に言われたくない、と声に出さずに泣いた。

「あらあら、反抗的な目ねぇ」
「これはやはりお仕置き、お仕置きが必要ね!」
「あぁ、イモが嫌いなら嫌いって最初に言ってくださいよぉう!」
 やっぱり、ダンダンゲシゲシと容赦なく踏まれて蹴られて泣く。

 ……執拗な攻撃は、しばらく続いた。

「はぁ……いい運動をしましたわ」
「そうですわね……」
 踏んで蹴りつかれたのか、水をコクコク飲む上妹と下妹。

「えぐ、えぐ……ひぃっく……えぐえぅえぅ……」
 そして、私はしょっぱい涙をひたすら飲むだった。

「――あら、史上最低の女たらしが飛んでいきますわ」
「今度はどこの娘をたらしこむのかしらね、節操がない男はキライよ」
 上妹、下妹が見上げて呟くのにつられて、私も空を目を向ける。

「あれは……大鷲(おおわし)?」
 遥か上空を大鷲が滑空していく。
 けれど、あれほどの大鷲は自然界では珍しい。

「大神ゼウス……!」
 と、なれば自ずとあれが何かわかった。
 大神ゼウスは、幾つもの化身とるが、好んで大鷲の姿をとることが多い。

 私も感情的に、彼を好きになれない。
 故郷を追われる原因をつくった戦女神アテナを生んだのは、神界きってのあのスケベなのだ。
 もし彼が浮気をしなかったら、もう少し世の中は平和だったろうに……。

「鷲、鷲……?」
 その大鷲を見た時、ピンと閃くものがあった。

「ステンノ、エウリュアレ、私を見ないように……」
 姉としての威厳を湛えて、上妹と下妹に注意を促す。

「まぁー! 姉の分際で呼び捨てなんて!!」
「そうよ、様をつけて敬いなさい!!」
「あぁ、ごめんなさいごめんなさい、ステンノ様~、エウリュアレ様~!」
 また、ダンダンゲシゲシと容赦なく踏まれ蹴られて泣く私。

 ……もしかして、私は勘違いしていたのかもしれない。
 姉とか妹とか関係なく、私は二人に虐められる運命なのかもしれないと強く自覚する。

「――“自己封印・暗黒神殿(ブレーカー・ゴルゴーン)”」
 幾分ボロボロになりながら、魔眼を解放し、まだ視界にいた大鷲を捉える。
 空の王は、その瞬間に羽ばたきを止めて墜落する。

 ……フ。
 やはり、この島を覗き見していたか、このスケベ大神。

 追放したのを何もしないで見ていただけなのに、実に未練がましい。
 そんなヤツに、上妹(ステンノ)と下妹(エウリュアレ)の姿を垣間見ることさえ断じて許せない。

「あ、落ちましたわ」
「いい気味です」
 上妹と下妹は、石になって海に落ちる大神を笑っている。

 そもそも、ここは海上の孤島。
 彼の治める天空とは違い、この島は海神ポセイドン様の保護下、領域なのだ。
 おとといきやがれ、である。

 もっとも、あのスケベ大神はあれくらいでは死なない。
 でなければ、今頃彼の妻ヘラに何千何万回と殺されているだろう。
 そうだったら良かったのに、とつくづく思う。

「……どうしましたの、ダメーサ?」
「……押し黙ってしまって、気持ち悪いですわ」
 私は眼帯をはめなおし、上妹と下妹を見つめる。

 本当なら、真の眼で彼女等の姿を目に焼き付けたい。
 でも、そうしたら私が望まなくとも石にしてしまう。
 それはイヤだし、後でこっぴどくお仕置きされるのが怖いのでやらない。

「ちょっ、ダメーサ!?」
「い、一体、何を……!?」
 だから、大好きな二人を掻き抱いて、その感触だけを強く強く記憶する。

「また、会えて嬉しかったです」
「え……?」
「な、何を……?」
 名残惜しさを押し殺して、私は離れる。

 ……決めたからには、迅速に。
 うかうかしていたら、いつものようにお仕置きされてしまう。
 それには、私自身逆らい難い魅力がある。

「――ピィー!」
 指笛を鳴らす。
 その呼びかけに、私の仔(ペガサス)は応えて空を駆けてくる。

「では、私は行きます! ありがとう……」
 駆け込んでくるペガサスに騎乗すると、未だ呆けている二人に別れを告げる。

「こらー、待ちなさい、ダメーサ!!!」
「許せない! 逃げるなんて、お仕置きはいつもより百倍増しっ!」
 背後から竦み上がりそうになる姉達……いや、今は妹達の声が聞こえる。

 ……が、それもすぐに聞こえなくなる。
 誰も、このペガサスの疾走を止めることはできない。

 遥か螺旋の上空で、眼下を見下ろす。
 ここからなら、追い出された故郷と、失くした故郷が見える。

「……さようなら、姉さま方」
 眼帯を外し、己が目でその光景をしっかり焼き付ける。

 しばらく見ていると、その風景がぼやけてくる。
 こんなにも涙が出るくらいに、懐かしい。
 それを拭っては拭っては、見つめ続ける。

 あそこに帰りたい。
 でも、私が帰らなくてはいけない場所は、想い出の場所ではない。

「……見えた」
 気づけば、何てことはない。
 やはり、これは夢だったのだ。あまりに嬉しい夢ではあったけど……。

「……あれが、“富士(ふじ)”ということでしょうか?」
 私は富士の山というのは見たことがないので、多分あれがそれに当たるのだろうと考える。

 飛び立った“形のない島”より、海を越えた南方の大陸にそれはある。
 巨人アトラスが天空を支える連峰――アトラス山脈。

 険しく、山頂を白の雪で覆われたアトラスの峰々。
 桜に聞いた富士も、同じように美しいのだと聞く。私もその山を、この目で見てみたいと思う。

「これで、全部そろった……」
 推理小説の犯人がわかったような感覚。

 桜から教えられた、初夢で縁起がいいとされるもの……。
 茄子(なす)は、賑やかな食卓にあったイモ。
 鷹(たか)は、大神ゼウスの化身である大鷲。
 富士は、アトラス山脈。

 それらを見ると、一年を幸福に過ごせるのだと言う。
 例えそうだとしても、今回のような夢はさすがに見たくもない……。

 一番のネックだった茄子に気がついたのは、桜のおかげだ。
 ジャガイモは、茄子科の仲間だと桜から前に聞いたのを思い出したのだ。

 さて、こんな都合の良い夢からはさっさと醒めて桜のところに帰ろう。

 ……私は、ペガサスを上へと手綱を向ける。
 天高い螺旋の空、その高みへと。

 ある親子は、鳥になろうと飛び立った。
 そして、子は親の制止を聞かず、私と同じ天の高みを目指した。
 結局、その子は墜落した……。

 私の駆るペガサスの翼は、そんな親子のように蝋(ろう)で固めた偽りの翼ではない。

 “天駆ける翼(ペガサス)”は、いかなる場所へも羽ばたいていける。
 何しろ、夜空を駆ける彗星は、彼の翼なのだ。

 ――――例え、向かう先が太陽であろうとも……!

 ……そう、私は無様に墜落せず、そのまま身を焼く高みへと至れるだろう。

 身を切るような速度の冷気に凍え、どんどん身を焼く熱射に焼かれていく。
 意識は、だんだん白く白くなっていく……。

『――わざわざ願いを叶えてやったのに、それを捨てるのか?
 ほれ、引き返せ。お仕置きされるだろうが、アンタはそれがイイんだろ、マゾだからな。……まだ間に合うぜ?』
 ……いいのです。
 私は、今は守りたいものが他にあるのですから。

『……そうかよ。どいつもこいつも自分のための欲がねーから、つまんねーの!
 ま、それもすっげー欲張りなコトだがなぁ』

 だから、世の中は見ていて飽きない。
 そんな呟きを続けると、この悪夢の張本人であろう声は遠ざかっていった――。



 ――――ここは、“形のない島”ではない島。

 ここでは、全てが夢。
 でも、温かい夢。
 いつか誰もが見ることになる夢なら、果たしてそれは夢であるのか……。

「行ってしまいましたわ。
 からかうのは楽しかったのですけど、しょうのない子ね、メドゥーサは」
「しょうがないですわ。
 本当に不遜だけれど、私達以外で大切なものをあの子が見つけたのだから」
 それが本当に嬉しくて、私達は微笑みあう。

 私達二人は、手を取り合って花園を歩く。
 ここは、こうして妹に守ってもらわなくても平和で穏やかだ。

 でも、退屈。
 ……二人きりでいるのには、退屈なのだ。

「あはは、おかしかったわね。あの子を姉にして遊ぶのは、私(エウリュアレ)」
「そうね、目を白黒させて、小動物みたいにしていたわ、私(ステンノ)」
 話題にするのは、いつも可愛い妹メドゥーサのことばかり。
 だから、三人でいればきっと楽しい。

「だから、いつままでも待ちましょう、私(エウリュアレ)」
「そうね、私(ステンノ)。……いつまでもいつまでも」
 いつか、ここに帰ってくる寂しがり屋の妹メドューサのために待ち続けましょう。
 そうしたら、また三人で暮らしましょう。

 ――――この“夢の果ての島”で……。



「――あぁ、戻って来られたのですね」
 目が覚めて安堵する。

 見渡す限り、どこもかしも本だらけ。
 私が桜をマスターと呼び、桜にライダーと呼ばれている世界の……私の部屋だ。

「あ、起きてた?」
 戸がすすっと開いて、桜が部屋に顔を出す。
 その声を聞いて、ようやく悪夢が終わったのだと実感する。

 ずいぶん寝坊したみたいだ。
 お日様の高さからすると昼近くになっている。

「はい、おはようございます、サクラ」
「うん、おはよう」
 体を起こして桜を迎える。
 身を起こすと、少し怠い気がした。

「どうしたの、調子悪そう。もう少し寝ていなくも大丈夫?」
「いえ、大丈夫です、サクラ。ただ、夢見が悪かったものですから……」
 言ってしまってから後悔する。見る見る顔を曇らせて、桜に心配をかけさせる。

 身を寄せて、桜が私の額に手を当てる感触がくすぐったい。
 もう大丈夫だからと、心配するマスターに笑いかけると、ようやく桜は安堵する。

「でも、サクラの言うように、初夢で、茄子・鷹・富士を見れましたよ」
「そうなの? それで、どんな夢だった?」
「……う」
 無邪気に問われると返答に困る。
 口ではとても言い表し難い夢だった、とても……。

「ええ、あれは……いい夢でした。
 妹である私が、短い間ですが姉になれたのですから……」
「よくわかんないけど、お母さんが嬉しそうで良かった」
 私の呟きに、自分のことように微笑む桜。
 それだけで、私はここに戻ってこられて良かったと思う。

 ん?
 ……少し、待って欲しい。

 今、桜は私を何と呼んだ……?

 ――――お母さん?

 聞き慣れないジャンルの言葉だ。
 残念ながら、私はそう呼ばれる経験はしたことはない。
 慎二には、「女王様~♪」と言われたことはあったが……。

「……サクラ。今、何とおっしゃいましたか?」
 ぎぎぃと擬音を立てながら曲がる私の首。
 油が切れたように動きが悪いのは、きっとあのペルセウスとアテナが私の首を手荒に扱ったせいに違いない。

「? どうしたの、お母さん?」
 やはり、聞き間違いではなかった。

 ――――悪夢は、まだ終わらない。

「どうしたんだ、桜」
「あ、お父様。お母さんの様子がヘンなの」
「何、そうなのか?」
 心配そうに部屋に入ってくるのは、何の冗談なのか士郎だった。

 と、言うより桜。
 何で私は「お母さん」で、士郎は「お父様」なのか……。呼び方の愛情度に著しく差があるような気がしてならない。
 疑問は尽きないが、私が桜の「母親」とは、これはどういうことか……!?

「でも、士郎が私の伴侶というのはいいですね」
 本音が漏れた。

「早く食事にしましょう」
「遅いよー!」
 部屋の外が賑やかになってきた。
 あの声から察するに、セイバーと大河だろうか。

「ただいまー、みんないるー!?」
 そうこうしている内に、凛も帰ってきたらしい。
 どうも、事態はより複雑になりつつある。

 しかし、これは本格的に開き直るしかないだろう。
 悪夢は、覚めるまで付き合うしかないのだ。

 この事態は、確かに頭が痛い。
 けれど、みんなが私とどんな設定の関係になっているか興味はある。

「……我ながら、物好きですね」
 この状況を楽しもうと考えている。

「さ、朝ごはんにしましょう、お母さん。今朝も、私とお父様でがんばったんだから♪」
「ほら、ライダー」
「……はい」
 士郎から差し出された手に、気恥ずかしく自分の手を乗せる。

「ぁ……」
 士郎の力は、私が知っているよりも強くて、容易く持ち上げられてしまう。

 その腕に引き寄せられて、士郎の逞しい胸に落ちつく。
 気づけば、士郎の体は大きい。
 いつもと逆で、私の方が士郎の顔を見上げなくてはならない。

「……す、すいません、士郎」
「ん、照れてるのか? いつまでたってもライダーは恥ずかしがり屋だな」
「……こ、このようなコトは、慣れていませんので……」
 桜には申し訳なく感じながら、この悪夢はいいかも知れないと思ってしまった。

『――ケケケ』
 どこかで、楽しそうな笑い声が聞こえきた……。



 → ……後書きへ


<履歴>
掲載日:2007/01/01


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